【生産国による分類】
アイリッシュウイスキー(アイルランド)
①ピュアポットスチルW、②モルトW、③グレーンW、④ブレンデッドWがあり、スモーキーフレーバーは無く、3回蒸留(スコッチ2回)が多く穏やかな酒質のものが多い。
特筆すべきは①のピュアポットスチルW、一つのポットスチル(単式蒸留器)でつくるウイスキーなので、ピュアポットスチルウイスキーと呼ばれています。本来の意味でのアイリッシュWです。
19~20世紀前半までアイルランドでは5種類の穀物を仕込みに使っていたと云う。大麦麦芽、大麦、小麦、オート麦、ライ麦。すべてを混ぜることもあったが、多くは未発芽の大麦と大麦麦芽、オート麦を原料として仕込んでいた。以前から、この伝統的なウイスキー造っているのは新ミドルトン蒸留所だけだった(大麦6:大麦麦芽4の割合で造っているレッドブレスト12年、15年やグリーンスポット)が、現在は造る所が増えている。麦芽風味豊かでアイリッシュらしい独特のオイリーさ、クリーミーでまろやかな味わいが特楽しめる。
蒸留所の数も、以前はブッシュミルズ、新ミドルトン、クーリーの3ヶ所しかなかったが近年クラフト蒸留所も増え操業予定も含めると50ヶ所以上、又新しい商品もどんどんリリースされ販売本数を著しく伸ばしています。
【主な蒸留所】
●ブッシュミルズ :大麦麦芽100%でウイスキーを造ることにこだわっている。
●クーリー(カネマラ):スコットランド産のピーテッド麦芽を使い、二回蒸留で製造しているのが最大の特徴。
●ランベイ :熟成に、カミュ(ブランデー)の熟成に使ったフレンチオーク樽を使用しています。
●バスカー :熟成樽は様々な種類を使用し造り分けていますが、オーナーがイタリアの会社だけあっ
て、シチリア産の酒精強化ワイン「マルサラ」の樽を使用したものもある。
●ウォーターフォード :地元の99カ所の農家と契約し、ウイスキー仕込みは農家ごとに、異なる品種別に行われ
ています。
●ミドルトン(ジェムソン):ジェムソンは軽快なブレンデッドWですが、麦芽の風味が豊かで、ストレートでも
飽きがこない飲みごたえと複雑な余韻を感じるレッドブレストも造っています。
アメリカンウイスキー(アメリカ)
アメリカにウイスキーの蒸留技術をもたらしたのは、17世紀後半~18世紀にかけて東海岸に入植したヨーロッパやスコットランド、アイルランドからの移民たち。その後、西へ西へと開拓を進めていったように、ウイスキー造りも原料や製法などを独自に開拓していき、自らのアイデンティティを確立。アメリカンウイスキーには、そんな“フロンティアスピリッツ(開拓者精神)”が宿っています。
【歴史】
17世紀後半~18世紀にかけて東海岸に入植した移民たちは東部のペンシルヴェニア州やヴァージニア州など寒冷な気候でも育つライ麦でウイスキーを造っていました。
しかしアメリカ独立戦争終結後の1791年に、ジョージ・ワシントン政権が財政立て直しのためウイスキー税を導入。これに反発した農民たちは西方のケンタッキー州やテネシー州など政府の目の届かないところに移り、その土地で収穫しやすいトウモロコシでウイスキー造りを開始、このことがバーボンウイスキーの誕生につながりました。
【禁酒法時代】
1920年、ピューリタン(清教徒)の、アルコールに対する強い批判から1933年まで禁酒法が発効されウイスキーは暗黒時代になり密造酒が全国各地で大量につくられた(密造業者はムーン・シャイナー、密造酒はムーン・シャインと言うらしい)。もぐり酒場、ギャングの暗躍などにより治安が悪化。1929年の大恐慌、大統領選挙が重なり勝利をおさめたルーズベルトは禁酒法を廃止。解禁後、徐々に回復、1948年には連邦アルコール法が制定されました。
その後、世界的なウイスキーの低迷がありましたが、現在、全米各地に個性的なマイクロ・ディステラリー(小さな蒸留所)が台頭し、歴史に新たなページを作っています。
【バーボン/テネシー】
イギリス本国との間で起きたアメリカ独立戦争の際、当時ブルボン王朝だったフランスがアメリカ側を支援したため、そのことへの感謝の印としてケンタッキー州に「ブルボン(英語読み:バーボン)郡」として地名を残すことになったそうです。
バーボンには特に生産地の規定がありませんが、テネシーウイスキーはテネシー州で造られることが法律で定められています。製法も蒸留後の原酒をサトウカエデの炭で濾過する「チャコールメローイング製法」で造られています。これにより雑味が取り除かれ、口あたりまろやかでほんのり甘い“テネシーウイスキーらしい味”となります。
【主な種類】
|
原 料 |
樽/焦がし有無 |
① モルトウイスキー |
大麦麦芽51%以上 |
新樽/焦がし |
② バーボン 〃 |
トウモロコシ51%以上、 |
〃 |
③ テネシー 〃 |
テネシー/51%以上/CM |
〃 |
④ コーン 〃 |
トウモロコシ80%以上 |
新樽焦がし無/古樽 |
⑤ ホイート |
小麦 51%以上 |
新樽/焦がし |
⑥ ライ 〃 |
ライ麦 51%以上 |
〃 |
CM:チャコール・メローイングの略
ストレート:アメリカンウイスキーは熟成期間の規定はありませんが、最低2年以上熟成させたものは「ストレートバーボンウイスキー」「ストレートコーンウイスキー」という風に「ストレート」が付きます。
特 徴
アメリカンウイスキーの味わいの特徴である香ばしさや甘さ、力強い風味は、原料と水、蒸留度数、熟成樽に由来します。
【原料】開拓者精神からトウモロコシ、大麦、ライ麦、小麦と多様です。コーンが多いと甘くまろやかに、ライが多いとスパイシー、辛口、オイリーなフレーバー、小麦を使うとよりマイルドでソフトな舌触りになるという。
【水】世界の多くのウイスキーが軟水で仕込まれるのに対し、アメリカンウイスキーはライムストーン・ウォーターと呼ばれるミネラル豊富な硬水で仕込みます。しかしこの水は弱アルカリ性で酸化酵素が働きにくいので弱酸性にするためバックセット(蒸留廃液)を加え調整します。これをサワーマッシュ方式といい、バーボン独特の仕込みで香味が均一になり、味わい深い味になると言われています。
【蒸留】ほとんどの場合、連続式蒸留機で行われますが、蒸留後の原酒のアルコール度数が64~70%程と低いため、穀物の風味がしっかり残ります。
【樽】原酒はコーンウイスキーを除いて、内側を焼いたホワイトオークの新樽で熟成されます。これは連邦アルコール法で義務付けられています。この樽の内側を焦がす「チャー」と呼ばれる独特の工程がアメリカンウイスキーの魅力である美しい飴色やバニラのような甘い香りを生み出しています。
【瓶詰め】スコッチで許されている色調整のためのキャラメル添加は一切許されていません。
【ラベル表示】
ラベルには酒質が表示されています。
◆ボトル・イン・ボンド Bottled in Bond
1蒸留所の1シーズンに蒸留されたものだけを樽詰めし、熟成4年以上でALC50%で瓶詰めしたもの。
◆シングルバレル single barrel bourbon
熟成がピークに達した1樽のみをボトリングしたもの。スコッチの「シングルカスク」と同義。
◆ヴィンテージ vintage bourbon
蒸留年を表記したバーボンで、主に長期熟成のものが多い。
◆スモールバッチ small batch bourbon
熟成がピークに達した少量の複数樽(通常は10樽以内)をブレンドしたもの。銘柄としてはブッカーズやノブ・クリークなど。
◆ポットスチル pot-stilled bourbon
単式蒸留器で蒸留された原酒のみを瓶詰め。
◆ノン・チル non-chill filtering
無濾過。ボトラーズ物のカスク・ストレングスやシングル・カスクに多い。
◆カスク・ストレングス cask strength
加水せず樽出しの度数で瓶詰め。
カナディアンウイスキー(カナダ)
ラベル表示はWhiskyですが、アメリカとの関係が深いので、ここでご紹介させて頂きます。
歴史
イギリス系移民が17世紀後半頃から造り始めたと推測されているが、公式には1769年カナダ・ケベック州の「ジョン・モルソン蒸留所」。
1776年アメリカの独立宣言がなされると、独立を嫌った一部のイギリス系住民がカナダに移住しライ麦、小麦、などの栽培を始め製粉業が発達、余剰穀物からウイスキーを蒸留するものが増え、ケベック、モントリオールには蒸留専門業者も現れました。
その後、1920年以降のアメリカの禁酒法時代にカナダは輸出を禁止しなかったため、恩恵に浴し全盛時代が築かれます。ライトな味わいが特徴なカナディアンウイスキーは現在もアメリカに広く浸透しています。
蒸留所はアメリカの国境に近い、人口の多いエリアに集中しています。かつては200以上ありましたが、統廃合の結果、大手10か所ほどになりました。現在、クラフト蒸留所が増えており、カナディアンウイスキーは新しい時代を迎えつつあります。これまで飲みやすいウイスキーをつくってきたカナディアンですが、色々なウイスキーが今後増えて楽しみです。
【定義】
・熟成は700リットル以下の樽で3年以上行う
・穀物を原料に酵母によって発酵を行うこと
・糖化・蒸溜・熟成をカナダ国内で行う
・アルコール度数が40度以上であること
・カラメルやフレーバリングは9.09%までOK
スコッチ・アイリッシュ・アメリカンではウイスキーに他のお酒を入ることは禁止されていますが、カナダでは香味液として9.09%まで以下のものは加えて良いことになっています。
バーボン・ウイスキー/フルーツブランデー/ワイン、シェリー、マディラなど
【原料】
主にトウモロコシ、ライ麦、大麦の麦芽といったものを原料にしています。この他に小麦の麦芽が原料として使われる場合もあります。
これらの原料の使用割合は任意ですが、仮に「カナディアン・ライ・ウィスキー」と名乗りたいのであれば、ライ麦の使用比率が51%以上でなければなりません。また、使用量に制限があるものの、全くウィスキーとは関係のない香味液(ワインやブランデーなど)を用いる場合もあります。
①と②を別々に造り、ブレンド(比率は、一般的に①が4 - 12%程度、②が88 - 96%程度)してALC40%で出荷される。グレノラ蒸留所のカナディアン・シングルモルトのように①の比率が100%のものもあるが稀で、ほとんどがブレンド。
① フレーバリングウイスキー |
ライ麦、トウモロコシ、大麦麦芽などを原料に連続式蒸留器でALC分64~75%で蒸留。 ライ麦由来のスパイシーでオイリーな風味があり、やや重厚で樽熟成は3年以上で内側を火で焦がした新樽や中古の樽を主に用いる。 |
② ベースウイスキー |
トウモロコシなどを主原料に、連続式蒸留器でALC95%以下で蒸留。 マイルドでクセの無いニュートラル・スピリッツに近い風味の軽い原酒。樽熟成3年以上で樽由来のフレーバーをあえて出さないように主に古樽を使用。 |